先日のSCAJのジャパンバリスタチャンピオンシップ【JBC2018】の学びを共有し、忘備録としたいと思います。
バリスタチャンピオンシップ(JBC)とは、エスプレッソという抽出方法を通しバリスタ思う最高のコーヒーをプレゼンテーションする大会です。
エスプレッソ・ミルクビバレッジ・シグネチャービバレッジ(バリスタオリジナルのエスプレッソのアレンジビバレッジ)の3つのコーヒーを、
15分以内に提供し、テクニカル(技術)・センサリー(味わい)・プレゼンテーションで競われています。
JBCに優勝すると世界大会もあります。
まず一人目は、ハニー珈琲・永井喜美男バリスタです。
結果としては決勝進出はできなかった永井さんですが、
なぜ僕がこのバリスタを最初に紹介するかというと、単純に、個人的にすごく好きだからです。笑
三年前に初出場した永井さんですが、当時なんとバリスタ歴半年にも関わらず、決勝(TOP6)に出てきた天才的なバリスタで、
プレゼンテーションの独創性と、徹底的な検証と科学的なアプローチによる説得力、それを支えるであろう探求心に強く惹かれました。
以来、大好きなバリスタの一人でいつかハニー珈琲・福岡天神VIORO店にいきたいと思い三年が経ってしまいました。
さて、今年の永井さんのコーヒーは
生産国:エチオピア
地域:イエガチェフ
地区:コチェレ
加工法:カーボニックマセレーション ナチュラル
このコーヒーを、3つのプロセス
①再構築(理解すること)
②革新(再構築に基づいたテクニックを考えること)
③共有(自身の感じたことをお客様にも感じていただくこと)
に分けてプレゼンテーションしていました。
特に、印象的だったのが、シグネチャー→ミルクビバレッジ→エスプレッソと、
意志を持って、多くのバリスタと逆順でコーヒーの提供をしていたことです。
その理由は、一番コーヒーへの理解が必要なシグネチャーからプレゼンテーションを始めることで、①再構築 のプロセスを伝えることがスマートにできるからでしょう。
そうすることで、その後続く、ミルクビバレッジ、エスプレッソとよりシンプルで飲み手の解釈が別れやすいものになっていくのを永井さんとの③共有 に導くことができるつくりかたをされていてとても引き込まれました。
いいコーヒーというのは、いいワインと一緒で、とても複雑で入り組んでいるものなので、飲み手の経験値に大きく左右されるものです。
それをプロセスを逆にすることでリードすることもできるし、とても入りやすいと思いました。
①再構築(理解すること)
シグネチャーでは、
加工法:カーボニックマセレーション ナチュラル
を模型を使いわかりやすく視覚的に説明していました。
カーボニックマセレーションとは、タンクに二酸化炭素を注入し酸素を追い出し、嫌気性発酵(酵母菌)という酸素を介さない加工法で、
温度と圧力の管理されたステンレスタンクで管理されてるコーヒーです。
ユニークな加工法や、発酵から出るガスの圧力によって、従来にはない個性的な風味が生まれます。
そして、このコーヒーと菌の発酵という観点で親和性のある”甘酒(麹菌)”をシグネチャーに使用していました。(ペーパーで濾していましたが) しかも、この甘酒も自家製らしくハニー珈琲の中でも永井さんが作る甘酒はリッチなボディが出てパカマラ(コーヒーの品種でしっかりした質感が魅力)と呼ばれているそうです。笑
これを、バナナ・パッションフルーツなどを加えエスプーマで圧力を加えなじませていました。
その後、濾し、ラズベリーのグラニテとエスプレッソを加え、ミキサーで撹拌し空気を含ませていました。
これが永井さんのシグネチャービバレッジです。
②革新(再構築に基づいたテクニックを考えること)
ミルクビバレッジでは面白い切り口でミルクの甘さを最大限引き出していました。
通常のミルクスチームでは、蒸気で温めるため、約10%ほど加水されます。
そこで、多くのバリスタは凍結濃縮ミルクを使用していました。(今年はこれが割とトレンドでした)
凍結濃縮ミルクとは、ミルクを凍らせると脂質や糖質から溶け最後に水分が残ります。
この性質を利用し水分だけを取り除き濃く甘いミルクを作って使用する。
しかしこの際、ナトリウムも強く出てミルクがしょっぱくなるそうで、
永井さんはそれを避けるため、ミルククラウドというマシンを使用し加水されない工夫をしてミルクビバレッジを提供していました。
ミルククラウド↓
最初に空気だけ軽く、エスプレッソマシンで注入し、それをミルククラウドで、底から間接的に熱を加え、
ピッチャー内では、撹拌することで脂肪球を細かくすることで口当たりを滑らかにより甘く感じられるミルクが作れるそうです。
大会後、ハニー珈琲のブースで、永井さんから聞いたのですが、このミルククラウド、オーストラリアの会社がつくったものらしいですが、世界に三台しかなく使用には契約や様々な制約があるそうです……!(ちなみに3日目は来場者は少ないですし、大会に出ていたトップバリスタがブースでコーヒーをサーブしていて普通に話せたりコーヒーが飲めますので超おすすめ)
ミルクは4℃に冷やしたものを使用することで、低い温度で空気が液体に溶けやすい性質を利用しているそう。
(冷えた水をコップに入れて常温に戻すと気泡が側面についていたり、お風呂の追い炊きの時の浴槽の側面の気泡も温度上昇で、水に溶けている気体が出てきたもの)
そして、出来上がったミルクとエスプレッソをはじめに少し馴染ませることで、浅煎りの低いPHのエスプレッソによる、ミルクの分離を防いでいました。(ミルクにレモン入れると分離しますよね)分離すると一体感が損なわれ、苦味を感じやすくなる。
こういったトップバリスタの科学からのアプローチが聞けるのは本当に貴重です。
ちなみに、このミルクビバレッジ甘すぎてエスプレッソの味がしないぐらいだそうで、ジャッジから評価されなかったそうです。
攻めすぎましたね。笑
③共有(自身の感じたことをお客様にも感じていただくこと)
最後は、エスプレッソです。
ここまでで、バリスタの視点や理解へのプロセスを語った上で、
香りのイメージの小瓶まで置いてあった(使い忘れていたみたいですが…)ので、徹底した共有だったと思います。
これで、決勝通らなかったので、よっぽどミルクビバレッジが響いたのでしょうね。
来年こそは!永井さんの独創的なプレゼンテーションと、その進化を楽しみにしています。
近々、福岡へ行こうと思います。
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最後まで、読んでいただいてありがとうございます。
それでは、今日も良い一日をお過ごしください!
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